まんなか/旋頭歌

わたしとふアリバイにより証明される
あなたとふアリバイによる証明、わたしの

ロジックと感覚と感情で成り立つ
デルタ地帯 どこに行かうといふのだらうか

洞穴に風が反響するかのやうに
小賢しい喇叭を鳴らす小人 細胞

ひとはみなゼロ・ウォーターを匿ひ続ける
ポリタンク 原罪すらもひとが創つた

自らに問へよ、赦すと赦されるとふ
綾織の光沢をまだ凝視できるか

もう硬くなつてしまつたパンが地面で
安心を呼吸してゐる これは願望

抵抗はもうしないんだ しづかに靄が
かかる視界、時計の針が零時を指した

孵化をする直前として殻の向かうに
見えたもの 世界の鎧、マトリョーシカの

出涸らしの伝説ひとつ 放物線の
冷たさが瞼の底に馴染める未来

ぼんやりと滲む水彩画の地平線
日に灼ける、風に打たれる肌とふ再生

足元に海抜3,000メートルと書く
ほつとした、安心できた、サナギになれる

天と地の間に走る断層といふ
人間よ もう降りれないエスカレーター

いち日のいち部を抉る 壊さないやう
ひと息にぐつと握つて、二分後の明日

サーカディアン・リズムに逆らふ気力は萎えて
まるまつた姿勢で渦に オトナの理屈

ひと色の絵の具を濃く濃く塗り込めた端
薄まつてしまふ、明日の青空みたいに

境界線、三半規管が反逆をして
跨げない 縦横無尽の寂しい升目

内側に向けて瞑つた両目が熱い
天球になれない水晶体は泣けない

乗り越えたブロック塀の向かうは元ゐた
場所なのに 溶け合ふマーブル模様の意識

遠慮がちな、でもあつたかい波、南風
極点の儚い夏の残滓と髪と

ゐるこゝが真ん中ならばたゞ仰ぎ見る
空にだけ、この胸元を晒す あふれる






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