酒楽の歌

波、五百重
遥けき彼方、綿津見の果つるとふ地は常世にて
酒の司なる石立たす少名御神の奇とも
神寿きつ寿き狂ほしつ
豊きつ寿き廻ほしつ
いざ熟れゆかむ
御酒よ御酒
いざ醸されむ
御酒よ御酒
神坐ます杜
誓ひの地
垂るゝ稲穂を搗き/\て
綺羅をひとつぶ、ふたつぶと
拾ひ/\つ集はせつ
吾子の髪など洗ふごと
淅しつ炊しきつ飯なさむ
をとめ、ひとくれ
口噛みてまた口噛みてなほ噛みて
熟れよ醸されゆけよ御酒
舞ひ奉り、歌謡ひ
まづは額づく、田神へと
さても日の神、みづの神、地の神、風の神さへも
来る明日に飢うることなくゐらるゝは
うむがしや
あなうむがしや
神坐ます奇なるみづ
かはらけに注ぎつ注ぎ/\
なべてみな違ふことなく
賜りてなほも寿がむや
「あさず食せ、さゝ」

いにしへはもはや悠けきものなればあれなさまほし
いまやうの歌、酒楽の歌





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